奨学金が返せない!延滞している場合の対処方法
借りたものを返さないのはルール違反だと考え、生活を切り詰めたり、借金をしたりして奨学金の返済を続けている方は非常に多いです。ただし、2004年に日本育英会から日本学生支援機構に引き継がれた時点で奨学金制度は大きく変わっているのです。
本来であれば、奨学金とは返済の必要のない給付型の援助のことです。
しかし、日本学生支援機構の奨学金は、給付ではなく個人が返済をしていかなくてはならない借金です。
家庭の事情で借金という形で奨学金を借りたことは認めるとしても、過去には無利子の奨学金がメインだったのに、国の政策によって利息付きの奨学金を借りる方が激増し、2003年には利息付きの奨学金を借入している人数のほうが多数になっているのです。
過去の育英会時代と比べると、学費の高騰もあり、金額は2.4倍、人数で1.7倍にも増えています。
奨学金の返済ができなくなってしまったことは決して恥ずかしいことでも悪いことでもありません。
ただし、奨学金を返すために借金をしても自分が苦しくなるだけです。まずは救済措置方法と債務整理のメリットとデメリットを比較して自分にあった解決方法を正しく選びましょう。
もくじ
奨学金の種類は?
奨学金は、文部科学省の「独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)」が「公益財団法人」と「日本国際教育支援協会」を統合して設立した、学生を支援する制度の一環です。
国内の大学・短期大学・高等専門学校・専修学校や大学院で学ぶ人を対象とした奨学金には、利息の付かない第一種奨学金と、利息の付く第二種奨学金があります。
さらに、第一種奨学金・第二種奨学金とあわせて利用する入学時の一時金として借入する入学時特別増額貸与奨学金(利息付)があります。
延滞・督促方法が怖い
奨学金の返済を延滞してしまうと、たとえ借りているのが利息の付かない第一種奨学金であっても、利息が加算されて請求されることになります。
延滞をすると、日本学生支援機構の職員から、もしくは業務委託している債権回収会社から督促連絡をうけることになります。
個人情報にあたるため、電話連絡に関しては本人確認してから内容を伝えてくれるとのことですが、日本学生支援機構は公式に「事前に承諾を得ている場合や、自宅や携帯番号の登録がない等、他に連絡を取る方法がない場合には、本人の勤務先に電話をすることがあります。」と公表しているため、会社に個人名で連絡をもらっても非常に対応に困る方もいらっしゃるとおもいます。
さらに長期間延滞してしまうと、法的措置をとられてしまいます。
【法的措置の種類】
① 支払督促予告・・未納になっている元金と合わせて利息・延滞金の一括返済の依頼がきます。
② 支払督促申立・・予告期限までに返済ができない場合には裁判所に支払督促の申立をします。
③ 仮執行宣言付支払い督促申立・・裁判所に仮執行宣言付支払督促の申立をします。(仮執行宣言付支払督促を取得すれば、強制執行の手続きに踏み込むことができるものです。)
④ 強制執行・・強制執行の手続きをとります。銀行口座の凍結や、給料の差し押さえなど、強制執行されてしまうと日常生活に支障をきたすと言わざるを得ないでしょう。また督促にかかった
費用も最終的にすべて請求されるということになります。
【奨学金の延滞金】
・平成17年4月以降採用の方・・年率で設定されており、滞納1日ごとに延滞金が増えていくことになります。1日ごとに増える滞納金は、“年率÷365(日)の日割り計算”になります。
- 平成26年3月27日までは年(365日当たり)10%
- 平成26年3月28日以降は年(365日当たり)5%
奨学金を返還できない場合の救済措置
奨学生の返還が難しい事情が発生した場合、日本学生支援機構に所定の書類を提出することで返済の救済措置の相談ができます。ただし減免制度を利用するには条件が非常に厳しく、適用されないケースがおおいです。
ただし、審査により承認されない場合は返還を継続することになります。
①所得連動返還型無利子奨学金制度
第一種奨学金(大学院は対象外)の借入をしていた場合、一定の収入(給与所得者収入300万・給与所得者以外所得200万)を得るまでの間、一定期間返済期限を先延ばしにしてもらう制度です。
先延ばしする期限に制限はありませんが、すでに借入している場合には適用されず、将来の返還が免除になる制度ではありません。
②返還期限の猶予制度
返還できない事情がある場合に、所定の書類と証明書を提出して、返還を一時停止、先延ばしにしてもらう制度です。
返還期間の猶予が認められるとその間の利息と延滞金は加算されません。一度の申し出で最大1年間猶予されます。
また、全額猶予と半額猶予の方式があり、2種類の奨学金を借りている場合には金額を合算して返済期間を延ばす(最大20年)ことで毎月の返済額を減額する方法や、一時的に片方の奨学金のみの返済を猶予してもらう申請方法もあります。
③減額返還制度
災害や傷病、そのほかの経済的な事情が発生した場合に、一定期間一回あたりの返済額を2分の1または3分の1に減額して減額適用期間(最大10年)を計算して返還期間を延長する制度です。
④延滞金減免制度
本人が身体的、また精神的障害により返済ができなくなり、連帯保証人からの分割返還計画書が日本学生支援機構に承認された場合などには延滞金を減額、または免除する制度です。
免除されるケースとしては「その他真にやむを得ない事由」という規定があるため、自分が当てはまるのか分からない場合には日本学生支援機構に問い合わせてみる必要があります。
⑤返還免除制度
本人が死亡、もしくは精神的障害などで労働能力を喪失した場合などに返済の一部、もしくは全額免除される制度です。
⑥返還期間変更制度
奨学金を二つ以上借入している場合(たとえば、高校と大学、第一種・二種両方など)にすべての金額を合計して20年をこえない範囲で返還期間を変更できる制度です。
奨学金の債務整理方法
奨学金の債務整理をするときに、いちばんポイントになる部分は連帯保証人が誰なのかという部分です。日本学生支援機構では、原則として「父母」が保証人としています。
本人が未成年者の場合は親権者、本人が成人の場合には父母。父母がいない等の場合は、兄弟姉妹・おじ・おば等の4親等以内の親族であることと定められています。
奨学金を債務整理した場合には連帯保証人に請求がいきます。
連帯保証人は親族である場合がおおいため、返済ができなくなって債務整理手続きをする場合には、事前に相談しておく必要はあります。
親族に迷惑をかけたくないと思い、借金をしたり、延滞してしまい、結果的に請求が連帯保証人にいってしまうともっと大きなトラブルとなります。
ただし、奨学金を借りるときに一定の保証料を支払って、保証機関が連帯保証する制度を利用していた場合には、債務整理をしても親族に迷惑がかからないため、家族に知られることなく手続きをすることが可能です。(保証機関は、公益財団法人日本国際教育支援協会)
本人が奨学金の返還を延滞した場合、日本学生支援機構の請求に対して保証機関が代わって残額を一括返済します。(これを代位弁済といいます。)代位弁済された場合には、今後の返済の話し合いは保証機関とすることになります。
また、奨学金を債務整理すると個人の信用情報機関に登録をされるため、いわゆる「ブラックリストの状態」になる期間があることはさけて通れません。
日本学生支援機構は全国銀行個人信用情報センター(KSC)に加盟しているため、3ヶ月の延滞をしてしまった時点でブラックリストの状態になり、延滞を解消してもこの登録情報は5年間消えないため、すでに延滞をしている場合には債務整理の手続きを検討しましょう。
①奨学金を任意整理した場合
奨学金の返済が厳しくなってきた場合に、奨学金を任意整理できないかという相談を頂く場合がありますが、奨学金は任意整理するときに含めることは基本的にありません。
理由は、任意整理の手続きは利息をカットして残ってる借金を最大5年(60回)で返済していく手続きのため、奨学金を任意整理するメリットがあまりないことと、残金が大きい場合に60回では払いきれないためです。
ただし、メリットが少ないからといって任意整理ができないわけではありません。
すでに長期にわたって滞納している場合には任意整理をして、返済計画を立て直すということ自体には価値があります。
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②奨学金を個人再生した場合
個人再生の手続きは裁判所を通した手続きで、裁判所で返済計画案を認めてもらえれば借金を原則5分の1に減額してもらい、3年~5年かけて返済していく手続きです。
たとえば、奨学金を毎月15万円借入していた場合には4年間で700万程度の返済額になっています。
その場合、5分の1に減額してもらえれば140万円程度になります。
140万円を3年間で返済する場合には月々4万円以内におさめることが可能です。
最長の5年で返済する場合には3万円以内まで下がるため、非常にメリットの高い手続きです。
ただし、日本学生支援機構は、個人再生で減額された分の奨学金は連帯保証人に返済を求めることになります。
個人再生をした本人は減額された分の返済で済みますが、連帯保証人が残りの分を返済できない場合には連帯保証人も一緒に債務整理手続きをするしかありませんので、事前に保証人と相談する必要があります。
奨学金を個人再生したときの信用情報機関(KSC)の登録機関は10年です。ブラックリスト期間は最大10年となります。
【個人再生の最低返済額の基準】
- 100万円以上500万円以下→100万円
- 500万円超1,500万円以下→債務額の5分の1
- 1,500万円超3,000万円以下→300万円
- 3,000万円超5,000万円以下→債務額の10分の1
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③奨学金を自己破産した場合
奨学金を払えず、自己破産する場合には裁判所で認められれば返済の義務はなくなります。
返済のために借金をしていたのであれば、他の借金も含めて自己破産をすることにより借金はゼロになります。
ただし、裁判所の基準である20万円以上の資産価値がある財産をもっている場合には処分の対象になります。
車や自宅、解約返戻金が20万円以上ある生命保険などは処分の対象になります。
奨学金を自己破産する最大のポイントは、連帯保証人に請求がいってしまうということです。連帯保証人も返済ができない場合には連帯保証人も一緒に自己破産することになります。
連帯保証人に請求がいってしまうことは避けて通れません。
機関保証を利用して奨学金を借りていた場合には、家族には迷惑がかからないため、返済ができない場合には自己破産をして生活を立て直すことができます。
奨学金を自己破産したときの信用情報機関(KSC)の登録機関は10年です。ブラックリスト期間は最大10年となります。
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奨学金・債務整理の相談【司法書士法人みつ葉グループ】へ
最近はニュースや新聞などで奨学金の返済が困難になっていることを取り上げていることもあり、いわゆる奨学金問題は社会問題として取り扱われるようになりました。
元々は将来の仕事や勉強のために奨学金を借りたはずです。
しかし、いざ卒業して就職すると同時に奨学金の返済がスタートします。
そこで何らかの事情で返済が困難になってしまうことは悪いことではありません。
ただし、奨学金はご自身が背負う借金です。友人や会社の同僚はもちろん、親や親族には迷惑をかけたくないという気持ちから、返済が困難なことを相談することができないという方も多いのではないでしょうか。
ましてや親や親族が連帯保証人になっている奨学金のことはさらに話すことが難しいと思います。
だからといって、返済できる見込みがない借金をして返済をすることは解決方法とはいえません。
まずは当事務所の無料相談でお話を聞かせてください。ご自身の状況に合った最善の解決方法を一緒に考えましょう。
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