債務整理後のクレジットカードとの関係
債務整理の相談を受けるときに一番よくある相談が「債務整理をしたらブラックリストにのるの?」ということです。
正確にいうと、ブラックリストは存在しません。
借入の審査を申し込みしたときに、貸金業者が登録している「信用情報機関(しんようじょうほうきかん)」というところに申し込みをしたときの個人情報が、すべて登録されます。
そして債務整理をしたときには、債務整理をしたという情報も追加して信用情報機関に登録され、債務整理をしたという「事故情報」が登録されている状態が「いわゆるブラックリスト」と呼ばれるようになりました。
ブラックリストに載った情報は、一定の期間は消すことができません。
ただ、ブラックリストのことを考えて迷っていても、返済の「延滞」をすると信用情報機関に事故情報として登録されるため、結局は同じことです。
債務整理を先延ばしにしても、なんの解決にもなりません。
現実を受け入れて正しい知識をもっていれば、数年間ローンを組めないことがあまり大きな問題ではないと理解できます。
大切なのは債務整理手続きに入るまえに対策をとることです。
もくじ
債務整理後にクレジットカードを作成できない理由
債務整理をした場合、依頼した弁護士や司法書士から受任通知というものを貸金業者へ郵送します。
貸金業者は受任通知を受け取ると、その情報を信用情報機関へ報告をします。
債務整理をした情報が登録されると、一定の期間は事故情報が登録された状態になるため、ほかの貸金業者やクレジット会社に新しく申し込みをしても、審査段階で「過去に金融事故をおこしている」と知られてしまうため、審査には通らないということになります。
債務整理手続きの中でも、個人再生と自己破産の手続きをすると、「官報(かんぽう)」という、政府が毎日発行している(法令の制定・改定、相続、破産などの裁判情報がのっている)新聞のようなものに掲載されます。
官報情報も審査基準だと公表しているクレジット会社もあるため、個人再生と自己破産を選択した場合、下記の会社に申し込みをすることは長期間むずかしくなります。
↓官報情報も審査基準だと公表しているクレジット会社はこちら↓
- エポス
- オリコ
- クレディセゾン
- JCB
- セディナ
- 三井住友カード
- 三菱UFJニコスカード
- ライフカード
ブラックリスト(信用情報機関)は3つ
①JICC(ジェイアイシーシー)【株式会社日本信用情報機構】
JICCとは、消費者金融、金融機関、クレジットカード会社、信販会社など他の業種も加盟している国内で唯一全業態を網羅する国内最大の信用情報機関です。
②CIC(シーアイーシー)【株式会社シー・アイ・シー】
CICは、クレジットカード会社系の信用情報機関です。 主な会員はクレジットカード会社と信販会社ですが、一部の消費者金融会社や銀行なども加盟しています。
③KSC(ケーエスシー)【全国銀行個人信用情報センター】
KSCは、銀行を主な会員とする信用情報機関です。 銀行やそれと同視される金融機関、そして政府関係金融機関や信用保証協会は、これらの情報を与信取引の参考にしています。
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ブラックリストに登録される4つの原因とは?
① 延滞
返済期限までに支払いができない場合、1日遅れただけでも問題ですが、信用情報機関に「事故情報として登録される」のはおおよそ2カ月以上(61日以上)の延滞が発生したときです。
ただし、短期間の延滞であっても何度も繰り返すと登録されることもあるので注意が必要です。
そして、事故情報の中でいちばん多く登録されているのがこの「延滞」情報です。
延滞は返済を再開することで解消されますが、事故情報として登録された記録は延滞が解消されてもすぐには消えません。
延滞してしまった場合、すでにブラックリスト入りしてしまった場合、債務整理をするデメリットはむしろありません。無駄な利息を払わずに、すぐに債務生理をしましょう。
② 代位弁済
代位弁済(だいいべんさい)とは、簡単にいうと、金融機関やクレジット会社が貸付をおこなうときに、貸した相手が返せなくなったときに備えて、保険(保証会社)をつけている場合があり、実際に返済が滞ったときに、その保証会社が代理で貸金業者に残りの残金をすべて支払うことです。
代わりに返済してくれるから安心ということではありません。
代位弁済がされた場合、今度はその保証会社が代わりに支払った残金を一括請求してくるということになります。
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- ポイント
消費者金融は無担保・無保証で貸付を行っている会社のため、借入を代位弁済されることはありません。
ただし、消費者金融が保証会社になっているローンはたくさんあります。
例えば、三菱UFJ銀行のカードローンを延滞していたらアコムから請求がきた!という場合はアコムが三菱UFJ銀行に対して代位弁済をおこなったということになります。
代位弁済をされた場合は、信用情報に事故情報が載ってしまったということになります。
③ 債務整理
債務整理した場合は任意整理、個人再生、自己破産など、すべての手続きでブラックリストとして登録されます。
④ 強制解約
クレジット会社、ローン会社や銀行など、貸金業者側から強制的に解約されることです。
不正利用(家族に貸したり譲ったりした場合)が原因の場合もありますが、基本的には延滞による強制解約です。
- 支払い期日1~30日以内の強制解約・・「延滞をしました」ということを示す情報が登録されます。
- 支払い期日2か月以上延滞の強制解約・・ブラックになったことを表す「移動」が登録されます。
信用情報機関に、この「移動」という記載がされると信用情報には事故情報が載ったということになります。
債務整理後、クレジットカードの審査に通らない期間
手続きと登録される信用情報機関によって期間が違う
▲任意整理・・・完済してから5年間保存される
▲個人再生・・・完済してから5年間保存される
▲自己破産・・・免責許可が下りたあと10年間保存される
▲過払い金請求・・過払い金の請求は、返済能力とは無関係なため、登録されない
<各信用情報機関の登録される期間>
CIC | JICC | KSC | |
---|---|---|---|
61日以上滞納 | 5年 | 1年 | 5年 |
3ヵ月以上連続滞納 | 5年 | 5年 | 5年 |
任意整理 | 記載なし | 5年 | 記載なし |
個人再生 | 5年 | 5年 | 10年 |
自己破産 | 5年 | 5年 | 10年 |
代位弁済 | 記載なし | 5年 | 5年 |
※信用情報機関のひとつだけに事故情報が登録された場合であっても、3つの信用情報機関で登録された情報は共有されているので、基本的に別の会社であっても審査は通りません。
クレジット会社カードローン会社が信用情報をみるタイミング
途上与信(とじょうよしん)をおこなった時
クレジット会社や貸金業者に新規の申し込みをおこなったときに、会社内で独自におこなっている「途上与信」と、貸金業法で定められている「法定途上与信(ほうていとじょうよしん)」という二種類の審査があります。
法定途上与信は内容としては途上与信と変わりありませんが、貸金業法で決められている条件に当てはまる場合、かならずおこなわなければならないと定められている審査です。
<法定途上与信をおこなう条件>
① キャッシングやローンで1カ月に利用している額が5万円以上で、借り入れの残高が 10万円以上の場合(毎月おこなわれる)
② その月の借り入れがなくても、借り入れの残高が10万円以上の場合(3か月に一度おこなわれる)
- ポイント
クレジット会社や貸金業者はカードの更新時期以外にも与信管理をしているため、個人信用情報機関の確認をして、異動情報(事故情報)が存在していたら、その時点でカードの利用を停止します。カードの更新もしないということになります。
債務整理後に新規の借入を別の会社に申し込みしても、事故情報が記録されているのでカードは使えなくなります。
また、債務整理をしていなくても「延滞」が発生している場合はカード会社がその情報を確認した時点でカードの利用停止をする可能性がたかいです。
ブラックリスト後にカードを申し込みする時の注意点
① 自分の信用情報を確認すること
自分の信用情報を確認したいときには「開示請求(かいじせいきゅう)」をすることで情報をみることができます。
信用情報機関から自分の情報を取り寄せることでブラックリストから抜け出せているのか確認してみましょう。
<信用情報の開示請求 受付方法>
●CIC・・ホームページ・郵送・窓口で信用情報を開示しています。
・手数料はホームページと郵送が1,000円、窓口が500円です。
●JICC・・ホームページ(スマートフォン)・郵送・窓口で信用情報を開示しています。
・手数料はホームページと郵送が1,000円、窓口が500円です。
●KSC・・信用情報の開示はKSCへの郵送申込みによってのみ受け付けています。
・手数料は1,000円です。
② 債務整理をした貸金業者は避ける
債務整理をした場合、一定期間のブラック情報が消えたあとも社内の情報としては永久に残っていると考えられます。
そのため、以前に借りていた貸金業者やクレジット会社に申し込むと審査におちてしまうため、全く過去に借入をしたことがない会社を選択するようにしましょう。
どうしても今すぐクレジットカードが欲しい人へ
どうしてもクレジットカードが欲しい場合、ブラックリストになっていても利用できるカードがいくつかあります。債務整理をする前に準備しておくことでインターネットショッピングなどの利用に不便を感じることはないでしょう。
① デビットカード
デビットカードとは預金口座を持つ金融機関が発行しているカードで、商品などを購入した時に代金が自分の銀行口座から即時に引き落とされるカードです。
デビットカードは自分の銀行口座の残高以上の買い物ができない為、審査なしでカード発行が可能なため、債務整理する前に一枚つくっておくと、カードがない不便さはほとんど解消されます。
② ETCパーソナルカード
ETCパーソナルカードは有料道路の支払いに限定した、高速道路会社が共同で発行するETCカードです。
クレジットカードをもっていない場合でも、デポジット(保証金)をさきに払うことで、有料道路のETC走行が可能になります。
お仕事でETCを利用される方は債務整理の手続き前に作成しておきましょう。
③ 家族カード
家族カードは家族会員カード、ファミリーカードとも呼ばれています。
クレジットカード契約者である本人の家族に対して発行できるカードです。
債務整理をしていない家族がいる場合は、この家族カードを発行してもらうことによって家族名義のカードを利用することができるようになります。
債務整理を選択したら返済中に気を付ける注意点
支払いに遅れない
任意整理を依頼すると費用が発生します。
借金を抱えている場合、弁護士や司法書士に依頼をした費用を一括で支払うことが困難な経済状況であることがほとんどです。
そのため、最近は費用を分割払いで支払いができる事務所がたくさんあります。
しかし、費用の支払いを滞納してしまうと、弁護士や司法書士は辞任(じにん)をせざるを得なくなります。 辞任とは、専門家が受けた依頼を途中で降りる、つまり契約を終了するということです。
途中で契約が終了されてしまうと、債務整理をおこなう前の状態に戻ってしまうということになります。 つまり、借金の一括払いの催促が再開、電話や督促状などが再びくるようになります。
辞任は、支払いを2度滞納してしまうとおこなわれるケースが一般的です。
支払いがどうしても厳しい事情がある場合は、依頼をしている事務所に連絡をして理由を説明するようにしましょう。
2度目までなら大丈夫だからといって、1度目の滞納の際に連絡をしないなどとは信頼関係が築けないということで心証が悪くなるため、必ず連絡をとれる状態を心掛けましょう。
繰上げ返済は問題ない
債務整理をして借金の返済がはじまってから、生活状況が改善されれば、繰上げ返済を行うことは可能です。
債務整理をおこなうと、利息をカットすることができます。
元金のみの返済になっているということは、繰上げ返済をしてもしなくても返済しなくてはならない金額は確定しています。
しかし、借金生活から早く抜け出したいと考えているならば、返済すればするほど早く完済に近づけることができます。
ただし、残りの借金がまだたくさん残っているのに無理をして返済をして、延滞をしてしまうことだけは避けましょう。
任意整理をした場合、二回延滞をしてしまうと和解書に「懈怠約款(けたいやっかん)」という文言があり、任意整理で分割払いの約束ができた契約自体が無効になってしまうということが書かれているため、注意が必要です。
債務整理の相談は【司法書士法人みつ葉グループ】へ
債務整理は、まちがいなく借金の問題を解決することができる手続きです。
一方で債務整理後の一定期間、クレジットカードが利用できなくなることや、住宅ローン、車のローンなども数年間は組めなくなることも事実です。
色々調べていると「ブラックリストの情報を消します」といったビジネスをうたってお金をだまし取る人もいますので十分注意してください。
ブラックリストを消すことは不可能ですが、一生クレジットカードが作成できないわけでも、住宅ローンが組めないわけでもありません。早期に借金を完済することが一番重要です。
当事務所では全国対応、電話・メールで無料相談を承っております。手続きをするかどうか迷われている場合でも、ぜひご相談ください。